【ファクトチェック】インフルエンザワクチンと新型コロナワクチンの死者数の比較

ファクトチェック
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 今回は、SNS上で拡散されていた「インフルエンザワクチンと新型コロナワクチンの死者数の比較」を行っているというグラフ・表について検討してみる。以下がそのグラフと表が示されている画像である。なお、この画像の出典は不明である。

1.「死亡者数」「重篤者数」

 この箇所に記されている数字は、医薬品・医療機器等安全性情報 | 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構 (pmda.go.jp)と厚生労働省の(医薬品等安全性関連情報 |厚生労働省 (mhlw.go.jp))の「医薬品・医療機器等安全性情報」の項に掲載されている各シーズンの「インフルエンザワクチン 接種後の副反応疑い報告について」から引用されている。(※各シーズンの報告のURLは以下にも掲載しておいた。)

 この「インフルエンザワクチン 接種後の副反応疑い報告について」では「重篤報告数のうち死亡報告数は…」というかたちで表記されている。つまり、「死亡報告数」は「重篤報告数」に “含まれている” のだ。「死亡報告数」と「重篤報告数」は別個の独立した値・数字ではない。しかし、この画像を見る限り、このことについては一切触れられていない。これでは、「死亡者数」が「重篤者数」から独立した値・数字のように見えてしまうだろう。

 また、そもそも「インフルエンザワクチン 接種後の副反応疑い報告について」は、認定・確定された副反応についての報告ではなく、あくまで「副反応 “疑い“ 」のある死亡例・重篤例についての報告である。この報告は「ワクチン接種」と「死亡」の間に因果関係が存在すると認定・確定しているわけではなく、概ね、両者の因果関係は否定的または不明であるとしている。

 この点に関しては以下の引用元を見てもらえれば分かるだろう。

 ※「シーズン」は、10月~3月末の期間を指している。

・平成23年シーズンのインフルエンザワクチン 接種後の副反応疑い報告について 医薬品・医療機器等安全性情報 000145393.pdf (pmda.go.jp)

・平成24年シーズン  安全性情報306.indd (pmda.go.jp) 

・平成25年シーズン  000145206.pdf (pmda.go.jp)

・平成26年シーズン  000209061.pdf (pmda.go.jp) 

・平成27年シーズン  000215437.pdf (pmda.go.jp) 

・平成28年シーズン  000221898.pdf (pmda.go.jp) 

・平成29年シーズン  000227185.pdf (pmda.go.jp)  

・平成30年シーズン  000233233.pdf (pmda.go.jp) 

・令和元年シーズン   000236873.pdf (pmda.go.jp) 

 平成24年シーズンと平成25年シーズンの各報告では、それぞれ1つの死亡例について、ワクチン接種との関連があるという意見を持つ専門家もいることが述べられている。平成27年シーズンと平成28年シーズンと平成29年シーズンの各報告では、それぞれ一つの死亡例について、ワクチン接種との因果関係を否定できないとする専門家もいることが述べられている。

 インフルエンザワクチンと同様に、現時点(2021年9月15日)では、新型コロナウイルスワクチン接種と死亡事例の因果関係も不明であるとされている。このことに関しては以下の引用元に記載がある。

・新型コロナワクチン接種後の死亡として報告された事例の概要 (コミナティ筋注、ファイザー株式会社)000830623.pdf (mhlw.go.jp)

・新型コロナワクチン接種後の死亡として報告された事例の概要 (モデルナ筋注、武田薬品工業株式会社) 000830624.pdf (mhlw.go.jp)

・副反応疑い報告の状況について000830630.pdf (mhlw.go.jp)

新型コロナワクチンの接種が原因で多くの方が亡くなっているというのは本当ですか。|新型コロナワクチンQ&A|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

新型コロナワクチンの動物実験で全ての動物が死んだというのは本当ですか。|新型コロナワクチンQ&A|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

ワクチン接種後死亡1002人「接種と因果関係」結論づけられず | 新型コロナ ワクチン(日本国内) | NHKニュース

2.「接種者1000万人あたりの死亡者数」「(新型コロナワクチン接種人数)13,149,400」

 「1000万人あたり」の数字を示そうとする上で、「1300万人」という母数は少ないと思われる。今後、新型コロナワクチンの接種人数がもっと多くなれば、「1000万人あたり」の数字を示すことも妥当になるかもしれないが、接種者が1300万人という段階で「1000万人あたり」の数字を示すのは尚早かもしれない。

 というか、そもそも、上の「1.」でも言及したように、現時点で二つのワクチンに関して「接種」と「死亡」の因果関係は概ね不明または否定的とされているので、「接種者1000万人あたりの死亡者数」は現時点で算出することができない。

3.「https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000083859.html

 このページは令和3年度の医薬品・医療機器等安全性情報についてのページである。しかし現時点(令和3年9月15日)で、このページには「インフルエンザワクチン 接種後の副反応疑い報告について」という報告はまだ掲載されていない。ちなみに、この報告は早くても9月下旬以降(とはいえ近年は12月以降が多い)に発表される。

 過去の「インフルエンザワクチン 接種後の副反応疑い報告について」については、このページから「令和2年度、令和元年度、平成30年度……」と遡ることで閲覧できるようになっているので、みなさんも確認してみよう。

4.「※新型コロナワクチンは厚労省発2021年6月9日の報告より算出」

 これだけでは引用として不十分である。引用する際には引用元・情報源のURLを掲載するべきである。

 ちなみに、2021年6月9日の厚生労働省の発表を確認してみたが、この画像内のグラフと表の内容に関する情報を見つけることができなかった。それゆえ、「13,149,400」という6月9日時点の新型コロナワクチン接種者数の真偽・正誤も判断できない。このことに関する情報を見つけた方がいたら是非我々に教えていただきたい。

5.「(2021年6月9日時点)」

 このグラフと表の内容は6月9日以前の統計を反映したものであるという。地域によってばらつきがあったとはいえ、6月9日以前に新型コロナウイルスワクチンを接種したのは 医療従事者(2021年2月17日~)、65歳以上の高齢者(同年4月12日~)(高齢者を対象にした大規模接種会場での接種は5月24日~)などの優先接種対象者が多かったのではないか。ちなみに、企業や大学などでの職域接種が始まったのは6月21日のことである。

 そうだとしたら、このグラフと表で示されているデータは、医療従事者や高齢者などの属性に偏っていると考えることができそうだ。

新型コロナワクチンの供給スケジュール等について | 首相官邸ホームページ (kantei.go.jp)

日本国内のワクチン接種状況 副反応の情報 新型コロナウイルス|NHK特設サイト

私はいつワクチンを接種できますか。|新型コロナワクチンQ&A|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

接種はどのような優先順位で行われるのですか。|新型コロナワクチンQ&A|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

 以上を鑑みるに、今回取り上げた「インフルエンザワクチンと新型コロナワクチンの死者数の比較」は、”誤った情報” である可能性が高いと判断できるだろう。

 特に、(故意か否かを問わず)引用元の報告の内容を誤解して、現時点(2021年9月15日時点)で未だ不明・未確定な「ワクチン接種と死亡事例の因果関係」を確定的に扱っているという点で、または、その不明・未確定な因果関係に依拠してグラフ・表を作成しているという点でこの画像の内容は根本的に誤っていると言えるだろう。

 皆さんがインターネットで怪しいと思った情報があれば、ぜひこちらへ投稿お願いします。

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