今回のテーマは「複数の例やサンプルで一般化を裏付ける」である。引用から話を始めていこう。なお、分かりやすくするために一部の引用の文言を改変している。
ルール7:複数の例を挙げる
一つの例だけを使った例証もあり得る。だが例を一つ示すだけでは、一般化を裏付けるには十分ではない。選んだ一つの例が例外かもしれないのだ。一般化をきちんと裏付けるには複数の例が必要になる。
一般化する事例が少ないときには、全ての、あるいはほぼ全ての例を考慮するのが最も望ましい。たとえば、あなたの兄弟について一般化するには、全員について一人ひとり検討するべきだし、太陽系の惑星すべてを一般化する場合にも同じことがいえる。
一般化する事例が多いときには、「サンプル」を選択する必要がある。必要とされる数は、例の内容にどれほどの説得力があるかにも左右される。また、一般化する対象範囲がどれほど広いかにも左右される。一般に、範囲が広ければ、より多くの例が必要になる。
(アンソニー・ウェストン著・古草秀子訳『論証のルールブック(第五版)』(ちくま学芸文庫、2018年) p38~p41)
たしかに、一つの例で一般化を裏付けることは難しい。なぜなら「選んだ一つの例が例外かもしれない」からである。なので、基本的には複数の例を提示するのが望ましい。ただ、例が多ければ多いほど裏付けという点では好ましいのだが、紙幅の制限もあるし、主張の核心や論点が大量の例に埋もれてしまい論証自体が分かりにくくなってしまう。これでは本末転倒だ。となれば、やはり「『サンプル』を選択する必要がある」だろう。
「サンプル」とは「見本」や「標本」のことで、数ある例の中から代表として選ばれた例のことである。当然ながら、とある問題に関する全ての例を網羅することなどできないので、その中から「代表」的な例を主張者は提示しなければならない。では、ここでいう「代表」とはどのようなことか。では、辞書的な意味を見てみよう。「代表」とは「その中の一部であるものが全体をよく表していること。また、そのもの」(代表とは – Weblio辞書)だそうだ。つまり、とある問題に関する代表的な例とは、「問題全体をよく表している、その問題の中の一部の例」であると言うことができそうだ。
そのような例、すなわち適切なサンプルの数は「例の内容にどれほどの説得力があるかにも左右される。また、一般化する対象範囲がどれほど広いかにも左右される。一般に、範囲が広ければ、より多くの例が必要になる」。
例えば、あなたは、自分が通っている大学の学生が東京都出身者ばかりだということを主張しようとしている。そのためには、あなたの友人が東京都出身者ばかりだということを主張するだけでは不十分である。それだけでは例の数が少な過ぎるし、例そのものも偏っている。というのも、そもそも東京都出身という共通点があったから友達になりやすかったのかもしれない。
つまり、もっと多くの例が必要なのである。自分が通う大学の学生が東京都出身者ばかりだと主張するためには、(その大学が小規模大学でない限り)あなたは、かなりの数の東京都出身者という例を集める必要がある。
そこまでしてはじめて「問題全体をよく表している、その問題の中の一部の例」、すなわち代表的な例、すなわち適切なサンプルが手に入るのだ。そうすることで、一般化を裏付けるための説得力のある例を提示でき、説得力のある論証・主張を提示できる。
今回はここまでだ。今回覚えておいてほしいのは「一般化するには基本的には複数の例が必要であり、その例が多くなる場合には適切なサンプル=代表的な例を提示しなければならない。一般にサンプルの数は、一般化する対象範囲が広ければより多くの例が必要となる」ということだ。
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