【ファクトチェック】新ニュルンベルク裁判2021

ファクトチェック
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 今回は「新ニュルンベルク裁判2021」という情報について評価・精査していこう。下の画像はTwitter上で拡散されていたものである。では早速、下の画像に示されている1~7を順番に取り上げていこう。

1.「2021」「今回の『実験的な』ワクチン」

 「2021年」における「今回のワクチン」は、”新型コロナワクチン” を指していると判断できるだろう。

2.「予防注射には、ダメージがあり場合には『死亡』する場合があります」

 新型コロナワクチン接種後の死亡については現時点(2021年9月11日)では因果関係は不明であり、調査中である。

 話は逸れるが、文章に改善の余地がある。

新型コロナワクチンの接種が原因で多くの方が亡くなっているというのは本当ですか。|新型コロナワクチンQ&A|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

新型コロナワクチンの動物実験で全ての動物が死んだというのは本当ですか。|新型コロナワクチンQ&A|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

ワクチン接種後死亡1002人「接種と因果関係」結論づけられず | 新型コロナ ワクチン(日本国内) | NHKニュース

・新型コロナワクチン接種後の死亡として報告された事例の概要 (コミナティ筋注、ファイザー株式会社)000830623.pdf (mhlw.go.jp)

・新型コロナワクチン接種後の死亡として報告された事例の概要 (モデルナ筋注、武田薬品工業株式会社) 000830624.pdf (mhlw.go.jp)

・モデルナ筋注使用見合わせロットに係る副反応疑い報告(死亡)の状況000830628.pdf (mhlw.go.jp)

・モデルナ筋注使用見合わせロットに係る副反応疑い報告の状況(医療機関からの報告) 報告日 2021年2月17日~2021年8月22日000830629.pdf (mhlw.go.jp)

3.「『ニュルンベルク綱領』10項目」

 ニュルンベルク綱領とは、「第二次世界大戦中、ナチスドイツに加担した研究者たちによって、強制収容所などで数多くの非倫理的な人体実験」が行われたことへの反省からまとめられた「医学研究における人体実験の倫理指針」である。以下が10個の項目である(ニュルンベルク綱領|法令・綱領・指針|福岡臨床研究倫理審査委員会ネットワーク RecNet Fukuoka (kyushu-u.ac.jp))。

1.被験者の自発的な同意が絶対に必要である。

 このことは、被験者が、同意を与える法的な能力を持つべきこと、圧力や詐欺、欺瞞、脅迫、陰謀、その他の隠された強制や威圧による干渉を少しも受けることなく、自由な選択権を行使することのできる状況に置かれるべきこと、よく理解し納得した上で意思決定を行えるように、関係する内容について十分な知識と理解力を有するべきことを意味している。後者の要件を満たすためには、被験者から肯定的な意思決定を受ける前に、実験の性質、期間、目的、実施の方法と手段、起こっても不思議ではないあらゆる不都合と危険性、実験に参加することによって生ずる可能性のある健康や人格への影響を、被験者に知らせる必要がある。

 同意の質を保証する義務と責任は、実験を発案したり、指揮したり、従事したりする各々の個人にある。それは、免れて他人任せにはできない個人的な義務であり責任である。

2.実験は、社会の福利のために実り多い結果を生むとともに、他の方法や手段では行えないものであるべきであり、無計画あるいは無駄に行うべきではない。

3.予想される結果によって実験の遂行が正当化されるように、実験は念入りに計画され、動物実験の結果および研究中の疾患やその他の問題に関する基本的な知識に基づいて行われるべきである。

4.実験は、あらゆる不必要な身体的、精神的な苦痛や傷害を避けて行われるべきである。

5.死亡や障害を引き起こすことがあらかじめ予想される場合、実験は行うべきではない。ただし、実験する医師自身も被験者となる実験の場合は、例外としてよいかも知れない。

6.実験に含まれる危険性の度合いは、その実験により解決される問題の人道上の重大性を決して上回るべきではない。

7.傷害や障害、あるいは死をもたらす僅かな可能性からも被験者を保護するため、周到な準備がなされ、適切な設備が整えられるべきである。

8.実験は、科学的有資格者によってのみ行われるべきである。実験を行う者、あるいは実験に従事する者には、実験の全段階を通じて、最高度の技術と注意が求められるべきである。

9.実験の進行中に、実験の続行が耐えられないと思われる程の身体的あるいは精神的な状態に至った場合、被験者は、実験を中止させる自由を有するべきである。

10.実験の進行中に、責任ある立場の科学者は、彼に求められた誠実さ、優れた技能、注意深い判断力を行使する中で、実験の継続が、傷害や障害、あるいは死を被験者にもたらしそうだと考えるに足る理由が生じた場合、いつでも実験を中止する心構えでいなければならない。

 新型コロナワクチンがニュルンベルク綱領の10個の項目に違反しているのであれば、新型コロナワクチンは「人体実験」であるということになる。しかし、「2.」で挙げた情報源(新型コロナワクチンの接種が原因で多くの方が亡くなっているというのは本当ですか。|新型コロナワクチンQ&A|厚生労働省 (mhlw.go.jp))には、「新型コロナワクチンを含むあらゆるワクチンは、大規模な臨床試験で安全性が確認された後に承認されています。日本で使用されているファイザー社及び武田/モデルナ社のmRNA(メッセンジャーRNA)ワクチンは、いずれも臨床試験において、ワクチン接種者とプラセボ接種者で、重い病気を発症した人や亡くなった人の割合に差がないことが確認されています」と明記されている。つまり、新型コロナワクチンの接種は人体実験ではなく、臨床試験を既に経て接種可能と判断されたワクチンである。

 「『指示された通り接種を実行しただけです』では、法的な保護になりません」の箇所自体は、上記のニュルンベルク綱領「1.」の「同意の質を保証する義務と責任は、実験を発案したり、指揮したり、従事したりする各々の個人にある。それは、免れて他人任せにはできない個人的な義務であり責任である」の箇所を参考にする限り、おそらく妥当であるが、先述の通り、新型コロナワクチンが、ニュルンベルク綱領の対象となる「人体実験」にはあたらないので、新型コロナワクチンに当該綱領の違反を適用することはできない。

 そもそも、上記の10項目を確認すれば明らかだが、ニュルンベルク綱領はあくまで研究倫理であって、違反者に死刑を科すことを規定してはいない。綱領内には「死刑」などの刑罰への言及もない。

4.「戦争犯罪の裁判」「『人道に対する罪』戦争犯罪軍事法廷」

 「あなたは『戦争犯罪の裁判』にかけられ、責任を問われることになるでしょう」の箇所にある「戦争犯罪の裁判」とは、その下に記されている「『人道に対する罪』戦争犯罪軍事法廷」のことなのだろう。

 ただ、新型コロナ(ワクチン)が関係した戦争が起こっているという報道(特定の国が宣戦布告したという報道など)は見つけることができなかった。「新型コロナ(ワクチン)」と「戦争」を絡めた報道もあるが、それらはあくまで、比喩として「戦争」という言葉を用いていたり、「新型コロナが戦争を引き起こす可能性」に言及していたりするものである。

 そして、『人道に対する罪』の管轄は国際刑事裁判所(ICC)にある(About the ICC (icc-cpi.int))ので、本件は軍事法廷における軍事裁判の対象ではない。人道に対する罪とは – コトバンク (kotobank.jp)人道に対する罪とは – Weblio辞書 も是非確認していただきたい。

 また、「ニュルンベルク綱領」と「ニュルンベルク裁判」を混同・同一視している可能性があることを指摘しておきたい。前者については先述の通りだ。後者の「ニュルンベルク裁判」とは、「1945年11月から1946年10月、ニュルンベルクで開かれた、第二次大戦のドイツの主要戦争犯罪人22名に対する連合国の国際軍事裁判。史上初めての戦争犯罪に対する裁判で、平和に対する罪および人道に対する罪が問われ、12名が絞首刑に処された」(ニュルンベルク裁判とは – コトバンク (kotobank.jp))である。両者とも第二次世界大戦時のナチスドイツに関連するものであり、なおかつどちらにも「ニュルンベルク」という地名が冠されているが、両者は別物である。

5.「ライナー・フルミナッヒ博士率いる1000人以上の弁護士と10000人以上の医療専門家のチーム 」

 ライナー・フルミナッヒ(フュルミッヒとも)という人物について検索しても、個人ブログやTwitterやYouTubeなどの信頼性に乏しい情報源しか出てこなかった。

 彼が率いているとされる「1000人以上の弁護士と10000人以上の医療専門家のチーム」の名簿等も見つけることができなかった。

6.「CDC、WHO、ダボス・グループ」

 CDC(Centers for Disease Control and Prevention、アメリカ疾病予防管理センター)(Centers for Disease Control and Prevention (cdc.gov))

 WHO(World Health Organization、世界保健機関)(WHO | World Health Organization)(公益社団法人 日本WHO協会 (japan-who.or.jp))

 ダボス会議(世界経済フォーラム)(The World Economic Forum (weforum.org)世界経済フォーラム (weforum.org))

 上記機関のいずれについても「訴えられた」というニュースは見つけることができなかった。これらの機関が訴えられたという内容は個人ブログやTwitter、YouTubeなどでしか見られない。

7.「法的手続き」

 「法的手続きを開始した」とあるが、どのような法的手続きをどこの何の裁判所に対して行っているのかということについての情報を見つけることができなかった。

 

 以上を鑑みるに、今回取り上げた「新ニュルンベルク裁判2021」は “誤った情報” である可能性が高い。

 皆さんがインターネットで怪しいと思った情報があれば、ぜひこちらへ投稿お願いします。

 ファクトチェックに関する本はこちら

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