ペットの世話について学べば何を得られるか?タルトを盗んだのは誰か?【仮言三段論法・選言三段論法】

議論
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 今回のテーマは「仮言三段論法・選言三段論法」である。引用から話を始めよう。

ルール24:仮言三段論法

 第三の演繹的論証は仮言三段論法だ。

 (前提1)もしpならばqである。

 (前提2)もしqならばrである。

 (結論)それゆえ、もしpならばrである。

 仮言三段論法では、前提が「もしpならばqである」の形式で、q(後件)が次の前提のp(前件)としてつながる限り、どこまでも妥当性が続いていく。

(アンソニー・ウェストン著・古草秀子訳『論証のルールブック(第五版)』(ちくま学芸文庫、2018年) p98~p100)

 これは、いわゆる「三段論法」である。「仮言三段論法」の「仮言」とは、「もし~なら」という意味である。最初の前提における後件が次の前提における前件となり、その前提における後件がさらに次の前提における前件となる……というように、「もしpならばqである」という形式の前提は「q(後件)が次の前提のp(前件)としてつながる限り、どこまでも妥当性が続いていく」。

 以下で引用元に挙げられている例を示そう。

 ペットの世話について学べば、人間に頼って暮らす生き物がなにを必要とするかを学ぶことができる。人間に頼って暮らす生き物がなにを必要とするかを学ぶとき、あなたはより良い親になる方法を学ぶ。したがって、ペットの世話について学べば、あなたはより良い親になる方法を学ぶ。

 この例文を分かりやすくすると以下のようになる。

(前提1)もしペットの世話について学べば、人間に頼って暮らす生き物がなにを必要とするかを学ぶことができる。

(前提2)もし人間に頼って暮らす生き物がなにを必要とするかを学べば、より良い親になる方法を学ぶことができる。

(結論)それゆえ、ペットの世話について学べば、あなたはより良い親になる方法を学ぶことができる。

 この場合、「ペットの世話について学ぶ」がp、「人間に頼って暮らす生き物がなにを必要とするかを学ぶ」がq、「より良い親になる方法を学ぶ」がrである。ここでは、qは(前提1)の後件として機能し、また(前提2)の前件として機能している。すなわち、qは(前提1)と(前提2)の連結部となっている。

 次に、「選言三段論法」を紹介する。

ルール25:選言三段論法

 第四の演繹的論証は選言三段論法だ。

 (前提1)pあるいはqである。

 (前提2)pではない。

 (結論)それゆえ、qである。

 選言三段論法には複雑な点がある。英語ではor(あるいは)という単語は二つの意味を持ち得る。一般に「pあるいはq」と言えば、少なくともどちらかが真であり、両方が真であることもある。これは「包括的な」解釈であり、通常は論理的であるとされる。だが、時として私たちはorを「排他的な」意味で使い、この場合には「pあるいはq」はどちらかが真であって、両方が真ではない。例えば「彼らは陸上から来るか、あるいは空から来るかのどちらか」と言えば、両方から同時に来ることはあり得ないと示唆している。この場合は、彼らがどちらか片方から来れば、もう一方からは来ないと判断できる。

 「あるいは」がどちらの意味で使われても、選言三段論法は妥当である。だが、強いて言えば、「pあるいはq」という文章から他に何を推論できるかー特に、pでもあると知っているならqではないと結論付けられるかどうかーは、「pあるいはq」とする特定の前提における「あるいは」の意味するところによる。

(アンソニー・ウェストン著・古草秀子訳『論証のルールブック(第五版)』(ちくま学芸文庫、2018年) p100~p103)

 これは、いわゆる「二者択一」であると言えよう。最初の前提で二つの可能性が与えられ、次の前提で一方の可能性を否定することによって、他方の可能性が結論となる。これが「選言三段論法」である。「選言」とは、「どれかを選ぶ」という意味である。

 では、ここで引用元に示されている例を以下で示そう。

 タルトを盗んだのは、ドラベッラあるいはフィオルディリージだ。だが、ドラベッラは盗んでいない。となれば、明白なのは……。

 この例文を分かりやすくすると以下のようになる。

 (前提1)タルトを盗んだのは、ドラベッラあるいはフィオルディリージである。

 (前提2) ドラベッラは盗んでいない。

 (結論)それゆえ、タルトを盗んだのはフィオルディリージである。

 この場合、「ドラベッラ」がp、「フィオルディリージ」がqである。「pではない」ことを証明すれば、「qである」という結論を得られる。ちなみにドラベッラとフィオルディリージはモーツァルト作曲のオペラ『コジ・ファン・トゥッテ』に登場する姉妹の名である。

 今回は仮言三段論法と選言三段論法について説明した。どちらもありふれた論法である。というか、我々人間の代表的な思考法とさえ言えるだろう。これら三段論法は我々が当たり前に使用する論法・思考法である。

 しかし、それゆえに、我々はこれらを半ば無意識的に使用する。無意識的に使用するということは、使用に慎重さや十分な思考を欠くということでもある。なので、こういった当たり前に用いる論法・思考法にこそ細心の注意を払おう。そうすることで、あなたの論証はより一層の説得力を持ち、論証の内容も正しく聞き手に伝わることだろう。

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